漢方薬局の役割

近年の薬局業界として、保険適用の調剤薬局とそれ以外の漢方薬局の店舗増減率が明確になっています。

調剤薬局が平成元年の30,000件から現在(2021年現在)には60,000件を突破していると、厚生労働省から発表がありました。

一方、保険適用外に当たる漢方薬局類の薬局の店舗数や取り扱いをする店は減り続けています。

医療用薬品における漢方薬市場は約1.6%といわれ、1,610億円の市場があるといわれていますが、このまま漢方薬は日本に根付かなくなってしまうのでしょうか。

ここではそんな漢方薬業界について見ていこうと思います。

漢方薬局と調剤薬局の違いについて

薬局

漢方薬局と調剤薬局の特徴の違いをざっくりまとめると以下のようなことがあります。

【漢方薬局の特徴】

  • 漢方理論を習得した薬剤師が常駐している。
  • 個人薬局として地域密着型店舗が多い。
  • 薬剤師はずっと変わらないところが多い。
  • 保険対象外のため薬代はすべて患者負担となる(ただし、漢方クリニックなどの処方箋を受け付けて、漢方の保険調剤を行うところもある)。
  • 普通の薬局やドラッグストアでは置いていない、症状に適した漢方薬の種類を取り扱っている。

【調剤薬局の特徴】

  • 取り扱う薬は西洋薬がほとんど。
  • j基本医師が発行した処方箋に基づいて調剤する。
  • 比較的異動や転職などによって薬剤師の入れ替わりが多い。
  • 保険適応なので、患者の負担は軽い。
  • 漢方薬は最初から組み合わせや分量は決められている、エキス剤がほとんど。

参照記事:「薬剤師の給与と待遇

漢方薬局の未来

1998年以降大手ドラッグストアが台頭してくると、調剤薬局の店舗数は急速に伸びていきました。体系化されており、どこでも同等の薬があり、同じサービスが受けられ、スピード社会においてとても便利な面があります。

ですから、より専門的で、特殊で、体系化されていない漢方薬を取り扱うことは困難だったと考えられます。

保険調剤とはかなり縁遠い、漢方薬局には、子ども、自分、両親、祖父母まで世代を通通っている家族も少なくありません。地域では認知度も人気も高いといった漢方薬局が存在しています。

漢方薬局は患者の症状に個別に向き合い、時間をかけて話を聞き、患者の心のよりどころになっているといえるのではないでしょうか。少子高齢化社会や核家族化による高齢者の一人暮らしが進んでいく中、漢方薬局の役割は決して少なくはないでしょう。

漢方のことを学ぶなら富山大学

漢方薬は複数の生薬を組み合わせた医薬品のためその、漢方薬の理論をしっかりと学んでいなければ専門家にはなることができません。漢方を学ぶには漢方医学教育がある大学になります。全国に大学医学部・医科大学は82校あります。漢方医学教育導入の働きがけを進めている状況ですがまだ数が少ないのが現状です。

国立大学の富山大学は先進の漢方医学の学びや研究が行われていることでも有名です。

富山大学の和漢医薬学総合研究所では伝統医学や伝統薬物を科学的に研究したり、東洋医学と西洋医学の融合を図り新しい医薬学体系のをめざしています。

富山という伝統的なくすり業の地で和漢医薬を学び、世界へ発展していく人材育成に力を入れた大学です。

和漢薬について学びたいと思うなら、富山大学まさに聖地ともいえる大学といってよいでしょう。

大学周辺には学生が生活しやすい設備が備わった富山大学学生マンションも立ち並んでおり、学生が安心して漢方医学を学ぶ環境が整っています。

漢方薬局の課題

漢方薬メーカーによってエキス剤が普及してきていますが、十分な漢方の知識がないまま漢方エキス製剤を扱い、服薬指導する薬剤師は少なくないといわれています。

そして、漢方薬は西洋学と比べ臨床研究による科学的評価が低いためエビデンスが必要になってくるでしょう。

それに付随して、新薬との併用による有効性と安全性や和漢薬の品質管理についても体系化してゆかなければならないとことだといわれています。

さらに、地球環境や生態系の側面から、漢方の原料である和漢薬資源に関する課題も残されています。

漢方薬局の役割

漢方薬局は今後後期高齢化が進む日本において、より私たちの健康な生活に結びつく医療として発展していくことが望まれています。

漢方が学げる大学の学部が増えていき、もっとグローバルな観点から漢方を発展させ、新薬や西洋医学とうまく適合していく研究が進んでいくことが、さらなる健康で健全な一人一人の身体づくりが、社会を形成していくことを私は願っています。